文部科学省が定める学級崩壊の定義とは
「子ども(達)が教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず、授業が成立しない状態が一定以上継続し、学級担任による通常の手法では問題解決ができない状態に至っている場合(学級がうまく機能しない状態)」
学級崩壊という言葉が生まれたのは、1990年代に新聞やテレビなどのマスコミが学校の荒れた教室を報道したことがきっかけとなっています。
もう少し具体的に知りたいなぁ。
文部科学省は、学級崩壊についてかんたんな事例を挙げて説明しているので、さらに現場に合わせた具体的なケースを紹介しますね。
文部科学省が挙げている学級崩壊の事例は広い意味で使われているので、おおまかに説明されています。
文科省で使われている難しい言葉はなるべく使用せずに紹介したいと思います。
この記事ではこんな疑問に答えます。
この記事を読めば、文部科学省が設定する学級崩壊の定義と、文科省が紹介する10の事例を知ることができ、今のクラスが学級崩壊をしているかチェックすることができると思います。
学級崩壊について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
文部科学省が定める学級崩壊とは【学級が機能しない状況】
文部科学省が定める学級崩壊をもう一度確認してみましょう。
「子どもたちが教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず,授業が成立しないなど,集団教育という学校の機能が成立しない学級の状態が一定期間継続し,学級担任による通常の手法では問題解決ができない状態に立ち至っている場合。」
かんたんに言うと、授業が成り立たない、生徒指導ばかりに時間が取られて授業が進まないといった「学級がうまく機能しない状況」のことです。
- 複数の子どもが教室を飛び出したり、席を立ってなかなか座らなかったりして授業が進まない
- 放課中に教室でドッジボールや縄跳びが行われる
- 給食の配膳が行われず、勝手に好きな量だけ給食のおかずを持っていく
- 掃除の時間になっても誰も掃除しようとしない
しかし、指導しても収まらない状態はまさに学級崩壊といえます。
文部科学省が考える学級崩壊が起こる要因とは【担任のせいだけではない】
文部科学省が考える学級崩壊の要因はこちら。
学級担任の指導力不足の問題や学校の対応の問題,子どもの生活や人間関係の変化及び家庭・地域社会の教育力の低下等が考えられる。
文部科学省は、学級崩壊の要因を「学級崩壊は担任のせいだけではなく、学校全体の対応の悪さ、子どもの人間関係のもつれ、家庭の教育力の問題なども含まれる」としています。
文部科学省が想定する実例10のケースとは
- 就学前教育との連携・協力が不足している事例
- 特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる事例
- 必要な養育を家庭で受けていない子どもがいる事例
- 授業の内容と方法に不満を持つ子どもがいる事例
- いじめなどの問題行動への適切な対応が遅れた事例
- 校長のリーダーシップや校内の連携・協力が確立していない事例
- 教師の学級経営が柔軟性を欠いている事例
- 学校と家庭などとの対話が不十分で信頼関係が築けず対応が遅れた事例
- 校内での研究や実践の成果が学校全体で生かされなかった事例
- 家庭のしつけや学校の対応に問題があった事例
①就学前教育との連携・協力が不足している事例
「A君が落ち着かないときは〇〇すると良い」「Bさんはすぐに泣いてしまうことがあるから、日頃から□□すると良い」といった情報がうまく伝わっていないことがあります。
また、小学校の先生自身が保育園・幼稚園の指導方法を知らず、子どもたちが小学校になってから急に指導が厳しくなったと感じ、「学校に行きたくない、なんだか落ち着かない」と思うことがあります。
②特別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる事例
文科省の抽出調査によると、通常の学級には6.5%の割合つまり35人学級だと2人以上の子が発達障害のグレーゾーンという結果が出ています。
担任の先生による一斉指導が理解できない、学級のルールが理解できないといった発達障害を疑われる子どもが通常の学級に多く在籍すると学級崩壊の要因となります。
③必要な養育を家庭で受けていない子どもがいる事例
保育園期や幼稚園期に必要な養育を受けていないと、学級のルールを理解できなかったり、一斉指導でみんなと同じように動けなかったりすることがあります。
保護者に学校の様子を伝えても、保護者の理解をなかなか得られないことが多く、学級崩壊の解決が難航することがあります。
④授業の内容と方法に不満を持つ子どもがいる事例
「授業がつまらない」「先生に不適切なことを言う」など、子どもが先生の授業のやり方に不満をもつことがあります。
親が子どもをかばうように、親子で一緒になって先生の授業に不満を言うようになると、学級崩壊の要因となります。
⑤いじめなどの問題行動への適切な対応が遅れた事例
学校ではいじめ問題やトラブルが起こることは珍しくはありません。
いじめの初期対応は慎重に行われますが、場合によってはいじめは解決しても、「加害者じゃないのに疑われた」「相手の被害妄想に巻き込まれた」などのように、信頼関係を崩してしまうことがあります。
⑥校長のリーダーシップや校内の連携・協力が確立していない事例
学級で重大な問題が起きると、担任は管理職に相談します。
管理職は長年の経験を生かして、担任に指導することが多いのですが、その管理職が対策や対応を間違えることがあります。
また、学校内の連携を取れていないと、伝言ゲームのように間違った情報が職員室で広がってしまい、問題が悪化することがあります。
⑦教師の学級経営が柔軟性を欠いている事例
教員から見て、指導が厳しい先生ほど魅力的に感じることがあります。
しかし、厳しい指導が行き過ぎると、教員に不満を持つ子どもが現れます。
最近は子どもの不満に親も味方をすることがあるので、先生の柔軟な対応が求められます。
経験の浅い先生がただ単に厳しくするだけでは、子どもが不満をもちやすく、学級崩壊につながってしまう可能性があります。
また、ベテラン先生でも昔のやり方で子どもへの指導を進めると、時代に合っていない指導の仕方や言葉遣いとなり、子どもが不満をもつことがあります。
⑧学校と家庭などとの対話が不十分で信頼関係が築けず対応が遅れた事例
保護者の中には、学校に要望を多く出す親、過度な要求をする親などのように、モンスターペアレントと呼ばれる親がいます。
学校で何か問題があった時に、基本的には学校は保護者に連絡をするのですが、保護者の中にはどう反応するか読めない保護者もいます。
学校で起きたささいな事を、保護者が必要以上に猛烈にわが子を叱ってしまう可能性があるときは、どうしても学校が保護者への連絡をしぶることがあります。
⑨校内での研究や実践の成果が学校全体で生かされなかった事例
私立、公立に関わらず、どの学校でも研究実践に取り組んでいます。
授業に関する研究、タブレット端末などのICTについての研究のように、学校によって研究実践は様々です。
その学校での研究が子どものためになれば良いのですが、研究成果を外部に公開するという大人の事情がはさまれると、子どもの負担が重くのしかかり、学級が荒れることがあります。
⑩家庭のしつけや学校の対応に問題があった事例
家庭のしつけについては、2通りの行き過ぎる問題があります。
- わが子を甘やかしすぎる家庭
- しつけが厳しすぎる家庭
甘やかされてきた子どもは、いつも自分の思い通りになると思っているところがあり、学校でのルールに従えないことがあります。
また、しつけが厳しすぎる家庭については、家でわがままが言えない分、学校でわがままな態度を取ることがあり、学校のルールに従おうとしないことがあります。
どちら子も親に学校の様子を伝えると、「家ではわが子に困ることはないので、学校のやり方が良くないのでは?」と、子どもが落ち着かないことを学校のやり方が悪いということにされ、担任は子どものあつかい方が難しくなり、学級崩壊につながることがあります。
文部科学省が定義する学級崩壊まとめ
文部科学省が定義する学級崩壊を一言で表すと、
学級崩壊は突然起こるというよりも、徐々に段階を経て崩壊していきます。
「学級崩壊になりそう」「これは学級崩壊している?!」という時こそ立て直し方が重要となってきます。
学級崩壊をした時は立て直し方で、今後の学級の様子がずいぶん変わってきます。
学級崩壊をした時の立て直し方は別記事「学級崩壊の立て直し方」をご覧ください。
学級崩壊は担任のせいだけではないです。学級崩壊を解決するためには適切な立て直し方を実践しましょう。
学級崩壊の立て直し方について学べば、担任は教員としての力量アップにつながり、助けられる子どもが増えます。
さらには、担任の先生自身が笑顔になって、教員としての楽しい学校生活を送ることができます。
別記事:「学級崩壊の立て直し方」について学んでみてください。