小学校の学級崩壊は実態がつかみにくかったり、原因がはっきりしなかったりすることが多いです。
なぜ、小学校の学級崩壊の実情や理由がはっきりしないか。それは3つの理由があります。
- 情報があちらこちらで食い違うことがあるから
- 記録が明確になっていないから
- 学級崩壊と認識しない方が良いこともあるから
今のクラスは学級崩壊しているのかな?
僕は、現役11年目の小学校教員で、過去に学級崩壊を経験したこともあります。
当時はつらい思いをしましたが、翌年には学年主任に昇進。
今も現役の教員で、楽しい学級経営ができています。
この記事ではこんな疑問に答えます。
この記事を読めば、今の自分のクラスが崩壊しているかどうかを確認することができるので、学級崩壊についての不安を少しは解消できると思います。
「小学校の学級崩壊とは何か?」「自分の学級は大丈夫?」と気になる方は、ぜひ最後までお読みください。
小学校の学級崩壊とは【落ち着かないクラス】
小学校の学級崩壊は子どもがとにかく落ち着かなくなる
学級崩壊をしているクラスとは、簡単に言ってしまえば、落ち着かないクラスのことです。
具体的には、次の様子があると学級崩壊をしているといえます。
- 授業開始の時間になってもほとんどの子が教室にいない
- 授業を始めると、複数の子どもが奇声をあげたり、暴れまわったりする
- 先生が注意をしても、子どもが集団で反発をしたり、完全に無視をしたりする
学級崩壊といってもいろいろなパターンがあります。
先生一人では授業が成り立たないといった状況になったときに、学級崩壊をしているといえます。
小学校の場合、学級崩壊をしていると、子どもは心が落ち着かなくなり、まだ幼いこともあって、身体も落ち着かなくなります。
学級崩壊をしている子どもの様子
学級崩壊が起きている教室の子どもがソワソワしているのは、大人と違ってまだ小学生なので成熟しておらず、心の不安やドキドキが身体によく表れるからです。
崩壊中は、心の不安やドキドキから次のような行動が子どもに見られます。
- 授業中にずっと席に座っていることができなくなる
- よく授業中にトイレに行きたいと言う
- 教室を移動するときに忘れ物をわざとする
- トイレや忘れ物を取りに行って教室を離れると、なかなか戻ってこない
- 教室や学校のあちらこちらを気にするようになり、触ってはいけない物を触る、入室禁止を平気で犯す
- 先生や人の悪口を平気で大きな声で言うようになる
- 給食や掃除の当番を平気でサボる
- 学校の物を雑に扱うようになり、物を壊しても反省した様子がない
- 漫画やスマホなど、学校に持ってきてはいけないものを持ってくる
学級崩壊が起こると、子どもは4つのタイプに分かれます。具体的に言うと、
- 真面目に過ごそうとする子
- 周りを気にしながら過ごす子
- 悪さをしても平気な様子でいる子
- 教室に居づらくなる子
の4つに分かれます。
②周りを気にしながら過ごす子が、だんだん③悪さをしても平気な子に変わり始めると、学級崩壊はどんどんエスカレートしていきます。
④教室に居づらくなる子は、もともとクラスの子に不安や不満をもっていて、学級崩壊が起こると、不登校になることが多い傾向にあります。
担任の先生は、悪さをする子ばかりに目を向けるのではなく、真面目に頑張っている子に目を向けてあげたいですね。
学級崩壊をしている先生の様子
学級崩壊が起きている教室の先生の余裕がなくなるのは、心のゆとりと時間のゆとりの両方のゆとりがなくなり、精神的にも物理的にも追い込まれるためです。
崩壊中は、先生のゆとりがなくなり、次のような行動が表れます。
- 教室で子どもを叱ってばかりになる
- 険しい顔が多くなり、笑顔がなくなる
- 生徒指導に費やす時間が長くなる
- 授業がうまく進まなくなる
- 授業後も生徒指導の後処理に追われるようになる
- 授業の準備が不足しがちになる
- 授業中、教科書や黒板ばかりを見るようになる
- 授業での間違いやミスが多くなる
- テストの返却や採点が遅くなる
- 子どもとの信頼関係が築けなくなる
- 自信がなく、あいまいな返答や態度になりがち
- 保護者からのクレームが多くなる
- 夜眠れない、体調を崩すといった体調不良が起こる
- 学校を休みがちになる
学級崩壊は続くと、先生の居場所がなくなり、休職となるといったケースもあります。
その場合、現在の小学校の職員は全国的に不足しているので、すぐには代わりの先生が見つからず、学級に担任不在の状況が続くことがあります。
文科省によると、選定した11自治体で調査した結果、266人もの常勤教員が足りないことが分かっています。
学級崩壊の実態や原因がはっきりしない3つの理由とは
- 情報があちらこちらで食い違うことが多いから
- 記録が明確になっていないから
- 学級崩壊と認識しない方が良いこともあるから
情報があちらこちらで食い違うことが多いから
①物事のとらえ方が子どもによって大きく異なる
小学校の場合、子どものとらえ方は人それぞれで、誰が何を言ったか、どんなことをしたかは曖昧になることが多いので、情報があちらこちらで食い違うことがあります。
子どもの話は、本人の思い込みや聞き間違え、被害妄想のような話のときもあるので、事実とぶれることがあります。
学級崩壊が起きたとしても、子どもによっては「これは学級崩壊だ!」と考える子もいれば、「ただ騒いでいるだけ」と考える子もいます。
小学校は学級担任制となっていることがほとんどなので、担任1人と子どもたちだけの教室ではクラスの実態がつかみにくいことがあります。
記録が明確になっていないから
②先生が多忙で大まかな記録しか取れていない
学級崩壊が起きたときに重要となるのは記録です。
「誰が、いつ、どこで、どのように、何をしたか」という記録が残っていると、客観的にクラスの様子を見ることができます。
しかし、今の小学校の先生は多忙です。
学級崩壊が起きると、通常の業務以外にも、生徒指導や指導報告、保護者連絡、対策のための打ち合わせなど、さらに多忙となります。
ほとんどの先生は指導したことを記録に取っていますが、物が壊れたり、誰かが怪我をしたりなど大きな出来事の記録が大部分です。
学級崩壊しているクラスで、授業中にどの子どもがどんな反発をしたか、どんな行動をしていたかを、毎回の詳細な記録を担任が取ることはほぼ不可能となります。
そのため、学級崩壊を起きたとしても、詳細な記録が残りにくく実態や原因がつかめないことがあります。
学級崩壊と認識しない方が良いこともあるから
③学級崩壊と認識するとさらに悪化する場合がある
学級崩壊という言葉には大きなインパクトがあります。
当事者だけでなく、保護者や同僚が「学級崩壊」という言葉を聞くと、とてつもなく大きな不安を抱きます。
また、学級崩壊をいうフレーズが頻繫に飛び交うと、よく悪さをしてしまう子どもが「学級崩壊しているから何しても大丈夫」という誤解をすることさえあります。
「学級崩壊」という言葉がひとり歩きしてしまうと、担任や子ども以外にも多くの人が不安となり、不安がさらに不安を呼び、悪循環を発生させます。
そのため、学級崩壊があっても世間に「私たちのクラスは学級崩壊しています」と広く公言されることは少ないので、さらに実態がつかみにくい時があります。
小学校の学級崩壊のチェックリスト【11項目】
学級崩壊をしているか実態がつかみにくいので、参考となるチェックリストを用意しました。
5つ以上当てはまる場合、学級崩壊にかなり近いと思われます。
- 教室で「うざい」や「死ね」などの暴言が飛び交う
- 下ネタが飛び交う
- 子ども同士のトラブルが多い
- 先生の話を聞いていない子どもが半数以上
- 教室で手紙回しがある
- 子どもの忘れ物が多い
- 教室にごみがたくさん落ちている
- 給食や掃除の時間に当番をサボる子がいる
- 先生の言うことを聞かない子が5人以上いる
- 授業中に奇声があがる
- 授業中に子どもが立ち歩く
チェックリストは、学級経営に関する教育書を参考に作成しています。
小学校の先生は、このチェックリストを使えば、客観的に学級経営を見つめ直すことができます。
近年、実は低学年や小学1年生での荒れが目立ち始めている
子どもは、幼児期(6歳まで)に親からの愛着を感じにくい状況が続くと、子どもの脳は「一人で生きていけるようになりなさい」と信号を発するようになります。
なので、そういった親からの愛着を感じにくい環境で育った子どもは、人に従うことが難しく、集団行動やルールのある学習が苦手となります。
そのため、集団行動や感情のコントロールができない子が増えています。
小学生に進級すると、幼稚園や保育園よりもさらに規律やルールが重んじられるようになり、
小学校に上がりたての1年生のような低学年での学級崩壊が多くなっているのです。
小学校の学級崩壊の原因は信頼関係が崩れているから
担任と子どもとの信頼関係が崩れるにはいくつかの理由があります。
- 担任が厳しすぎる
- 担任が優しすぎる
- 担任がだらしない
- 担任が子どもに関心が向いていない
- 担任のミスが多い
- 担任と保護者がもめている
学級崩壊はいくつかの原因が重なっていることが多いです。
また、校長など管理職からの期待が大きい先生ほど、難しい学年や学級を持たさせられることがあります。
もし、小学校で学級崩壊が起きたときにすべき2つの対策とは
学級崩壊が起きた時の対策を【先生向け】と【保護者向け】の2つに分けて解説します。
先生ができる学級崩壊の対策
小学校の先生ができる学級崩壊の対策があります。
- 子どもたちの話に耳を傾ける
- 子どもたちの話をうなずいて聞く
- 子どもの話を最後まで聞いて途中で否定しない
- 教室ではいつも笑顔でいる
- いつも冷静な判断を心がける
- 教師の理想ばかりを押し付けない
- 子どもとの距離感を大切にとる
- 最後まで子どもたちを信じ切る
保護者ができる学級崩壊の対策
保護者ができる学級崩壊の対策があります。
- 子どもの話を聞く
- 子どもの話をすべて鵜呑みにしない
- 不明確なところがあれば担任に確認する
- 批判ばかりするクレーマーにならないようにする
- 担任を助けたいという気持ちで管理職に連絡をする
- 子どもたちを見守るという気持ちが大切
- 最後まで先生や学校を信じる
偏った情報になっているかもしれないので、学校に相談をして一度きちんと事実を確認しておきましょう。
小学校の学級崩壊まとめ
小学校の学級崩壊は実態や原因がつかめないことが多いです。
- 情報があちらこちらで食い違うことが多いから
- 記録が明確になっていないから
- 学級崩壊と認識しない方が良いこともあるから
学級崩壊の原因は、単純に教師の力量不足というわけではありません。
もちろん、先生自身が改善していかないといけないことは多くあります。
しかし、今の学級を立ち直すことができるのも、今の担任の先生です。
担任の先生が心穏やかに学級を動かすことができれば、学級を立て直すことができます。
先生自身が授業や学級経営を改善して、子どもと一緒に成長していけば、
「いろいろあったけど、最後の3月には笑って過ごせるね」といった学級にすることができます。
そのためにも、先生自身がこれまでの経験だけに頼ることなく多くを学びましょう。